潜在記憶とプライミング

プライミング(prming)のもとになる「prime」は「準備する」とか、ポンプの「呼び水をする」といった意味で、心理学用語としての「プライミング」は、文字、単語、図形などの刺激を以前に観察していた結果、初めて示された刺激と比べて、その刺激の認知的処理が促進される現象を示す。

そして、プライミング課題による成績が潜在記憶も存在を示すのに用いられる。

通常の顕在記憶のテストでは、先行の学習段階で単語リストの学習を行ってから一定時間後、新しい単語を含む単語リストを1つ1つ提示し、それが以前に学習した単語であるかどうかの再認テストによって調べる。

一方、タルビング(Tulving,1983)が行ったプライミングによる潜在テストでは、先行の学習段階で同じように単語リストが提示される(実験意図を隠すために、単語リストを数える課題という名目で行ったりする)。

そして一定時間後(1時間~1週間)後のテストでは、記憶を調べるといった形式をとらず、「A□I□A□(ANIMAL)」「か□□う□ん(かみふうせん)」のように空欄に文字を埋めて作る課題の断片完成テストのような一種の認知テストとして行われる。

テストで提示される□に入る単語のうち、半分は先行の学習段階で提示した単語、半分は新しい単語から成る。こうした断片完成テストの結果、先行で学習段階で提示した単語について断片完成させるほうが、新しい単語を断片完成させるよりも成績が良い。

この結果、先行の学習段階で接した単語の情報を保持していることを被験者自身は気づいていないにもかかわらず、その情報が後の課題の遂行に促進的な影響を与えているという事実が見出された。いわば先行の学習段階で単語を提示されたことが、断片完成の作業を促進させる「呼び水」になっている。

この場合、被験者が先行のリストの単語をたまたま想い出して課題を行った可能性がないわけでもない。したがって通常の再認テストと同じく顕在記憶を調べていたのかもしれない。しかしタルビングは、

①正しく再認された単語が断片完成テストで成績が良いとは限らない。

②再認は1週間を経過すると成績が低下するが断片完成の成績は低下せず、したがって潜在記憶は顕在記憶に比べて長時間保持されていること。

などを指摘して、プライミング課題によって潜在記憶の働きが明らかにされたと主張した。さらに、

③潜在記憶は顕在記憶と違って材料の意味づけ、意味的処理を行っても影響を受けないこと。

④顕在記憶は先行の学習段階とテスト時との感覚様相が異なっても(たとえば学習段階では視覚提示、テストでは聴覚提示する、またはその逆)、同一の感覚様相と同様の成績を生じるが、潜在記憶では同一の感覚様相の場合のみに効果が生じること。

などの相違が両者のあいだにあるとされている。

顕在記憶と潜在記憶との区分は、健忘者患者の症例でより際立って表され、多くの研究によって、健忘者患者は顕在記憶に障害がある一方、潜在記憶は維持されていることが示されている。なお健忘者患者は、単語の自由再生や手がかり再生課題では健常者よりも成績が悪いが、語幹完成課題などプライミング課題では、健常者の成績と変わりがないとされている。

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