感覚記憶(sensory memory)

記憶はその保持期間により幾つかの状態が存在し、まず感覚器官を通して環境から獲得される情報は感覚記憶(sensory memory)感覚情報保存(SIS)と呼ばれる短時間(1秒以内)しか持続しない記憶に入る。

前項目の「三つの記憶貯蔵庫」でもあるが、記憶は次に短期記憶(STM)に移り、またこの段階では、リハーサルを行わないと18秒ほどでほとんど消失してしまう。

そして次に記憶は、長期記憶(LTM)として固定され、この段階の記憶の容量はこれまでに分かっている限りでは無限大である。

記憶システムの関連性

では、感覚記憶(sensory memory)の話に戻すが、感覚記憶は大量の情報を保持し、感覚器官に入る感覚情報をのきわめて正確な表象を保持し、そして感覚記憶はわずかな時間しか保持しない。

すべての感覚様相に対応する感覚記憶が存在するであろうが、感覚や知覚の研究と同様に、最も広範に研究されている感覚記憶は視覚(アイコニック記憶)と聴覚(エコイック記憶)に対応するものである。

最もよく研究されている感覚記憶の視覚(アイコニック記憶)に焦点を絞った、ジョージ・スパーリング(George Sperling 1960)の実験がある。

ジョージ・スパーリングの実験

通常われわれは、常に多くの情報をが映っているがそれらすべてを思い出すことは難しく、ごく一部でしかない。この仕組みを示すジョージ・スパーリング(George Sperling 1960)の実験がある。

スパーリングは、被験者に下図のような文字列(数字も含んだ)一行あたり3文字の3行、あるいは3行4列に並べた刺激配列を、ごく短時間(50ミリ秒)瞬間提示し、その直後に被験者がどれだけ再生可能か観察した。

Sperling-1

このような全体について答える全体報告法では、正確に答えられた字数は、多少の個人差はあったが字数や配列に関係なく4.5字であった。この結果において提示時間が短すぎたため見えなかったのではという疑問を検討するため、提示時間を10倍の500ミリ秒まで増やしても報告できる字数に変化はなかった。

これは、感知範囲(span of apprehension:直後に再生可能な項目数のこと)や記憶範囲(memory span:記憶を完全な順序で再生できる最大項目数のこと)として知られる数量で、ほぼ1世紀前から周知のことであり、直後に再生可能な項目数は、こうした情報の配置から人が獲得できる情報の最大量(記憶の限界)を表していると考えられた。

しかし、被験者の中には自分が報告したよりも多くの文字が見えたと述べる人が多かった。これは短い時間に多くの情報を保持できていたのに、その情報を報告する直前に忘却したという可能性を示唆される。

このような短時間の保持を調べるため、示唆された全体のうちの一部(1行分)のみを答える部分報告法(partial-report procedure)での実験が行われた。

この手続きでは、文字の配列は約20分の1秒間、被験者に提示し、またその文字列は可変で文字は数行に配列され、無作為に選択された一つの文字行だけを報告しなくてはならない。その際、文字配列の直後に提示された一つの聴覚的手がかり(audi-tory cue)が、どの行を報告しなければならないかを指示した。

例えば、高音は第1行、中音は第2行、低音は第3行目のように指示をした。

これにより、被験者は全体の文字のうちどの行が指示されるかが予測できないため、したがって指定された1行4文字中平均3文字が報告できたという事実は、指定されていない他の行についても同程度報告できた可能性を示唆する。

例えば、もし被験者が3文字報告できたとすれば他の行のそれぞれ3文字づつ、つまり3×3=9で、換算すると平均して9文字を報告できたと推定される。

本実験の結果は下図左のように、文字数が増加すると報告される文字の数は全体報告では4.5文字で頭打ちとなり従来の結果の再現であったが、部分報告においては、報告された文字数は提示された文字数とともに上昇し続けた。

さらに下図右のように文字刺激の提示後、報告する行を指示する音までの時間間隔を変化させたところ、時間間隔が大きくなるにしたがって部分報告の有利さが減少し、約1秒後の遅延でほとんど全体報告と同じになった。

Sperling-2

つまり、眼に映った情報はしばらくそのまま神経系内に保たれる、これをスパーリングは視覚情報保存と呼んだ(感覚記憶(sensory memory)や感覚情報保存(SIS)の一種)。そしてその間にパターンとして知覚され、過去の知識(記憶)と照合され、文字なら文字として認知される。

一方読み取られなかった情報は、ごく短時間で消えてしまう。さらに、読み取られた情報は、短期記憶に保持されるが、ここでは感知範囲(span of apprehension)や記憶範囲の制限が働くと考えられる。

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