進化・遺伝・行動(3)

ある形質は単一遺伝子により決定されるが、多くのヒトの特徴は複数の遺伝子によって決定され、多因子遺伝(polygenic)という。知能、身長、情動などの形質は別個の種類に分かれることはなく、連続的変化を示す。

ヒトの多くは鈍くも優秀でもない。知能は広い範囲に分布し、ほとんどの個人は中間付近に位置する。特定の遺伝的障害は精神遅延になる可能性もあるが、たいていはヒトの潜在知能は異なる能力を支える要因に影響を与える数多くの遺伝子によって決定される。無論、この遺伝的可能性は環境要因によって影響を受ける(Plomin,Owen,&McGuffin,1994)。

品種改良(selective breeding)

動物の特定の遺伝形質の研究方法は品種改良(selective breeding)である。品種改良では、ある行動や身体的形質が高い、あるいは低い動物同士を交配する。たとえばラットの学習能力の早期の遺伝研究では、迷路をうまく学習できないメスとオスを交配した。

そして、その子孫に同じ迷路課題を行った。数代の交配を重ねると、ラットの「愚鈍」な血統と「聡明」な血統が作り出された。しかし、このような交配は、多少なりとも知的な動物を生み出すとは限らない。たとえば、恐怖心の少ない動物はより多く探索するので、迷路課題はうまいと予想される。

品種改良は、数多くの行動的特徴の遺伝性を解明するために使われてきた。たとえば、イヌは興奮しやすい性質あるいは穏やかな性質に、ニワトリは攻撃的で性的に活発であるように、ショウジョウバエは光により多くあるいは少なく引き付けられるように、ラットはより多く、あるいはより少なくアルコールを好むように交配されてきた。

もし、形質が遺伝により影響されるとすれば、それを品種改良で変えることが可能であるはずである。もし、品種改良により形質が変わらなければ、その形質は主に環境因子に影響されていると考えることができる(Plomin,1989)。

双生児研究

ヒトの品種改良の実験を行うのは、明らかに倫理的問題があるので、代わりに血縁のある人の行動の類似性を見ていけなければならない。ある種の形質が家族に受け継がれていることは少なくない。しかし、家族は遺伝的に結ばれ、環境も共有している。

もし、音楽の才能が「家族に受け継がれている」としても、遺伝なのかあるいは両親の音楽への情熱の影響なのかはわからない。アルコール依存症の父を持つ息子は、そうでない場合に比べアルコール依存症になりやすい。これには遺伝と環境要因とどちらの影響がより重要なのであろう。この種の疑問に答えようと心理学者は双生児の研究を始めた。

一卵性双生児は一つの受精卵から発生するので、まったく同じ遺伝子を持っている。その子たちは単一の接合子、あるいは受精卵からつくられているので一卵性(monozygotic)と呼ばれる。二卵性双生児は異なる卵細胞から発生するので、遺伝的に兄弟と同じ程度の類似性を持っているに過ぎない。この場合二つの受精卵から発生するので二卵性(dizygotic)と呼ばれる。

一卵性双生児と二卵性双生児の研究が遺伝と環境の影響を区別するのに役立つ。一卵性双生児は知能に関して二卵性双生児よりも、たとえ誕生から離れて別々の家で育てられた場合でも、類似する。

さらに、同様のことがある種の人格特徴や統合失調症への罹患率(りかんりつ:観察対象の集団のある観察期間に疾病の発症の頻度をあらわす指標の一つ)にも言える。最近の研究ではMRIで計測した脳の灰白質の量が、二卵性双生児に比べ一卵性双生児でより高い相関を示し、さらに、知能と相関していることが示されている(Thompson et ai.,2001)。

すなわち、頭のよい人は脳の灰白質の量が多く、その量は遺伝的要因と深く関係しているようである(Plomin&Kosslyn,2001)。

養子研究から提示された驚くべき発見の一つは、遺伝的影響は実際、年齢とともに強くなっていくということである。小さい子供の心理的形質は、生物学的両親にも養父母にもとくに似ていない。しかし、成長するにつれ、一般的認知能力や言語能力のような形質では養父母に似て、生物学的両親には似ていないないと思うかもしれないが、予想に反して、養子は16歳近くになるとこれらの形質が養父母よりも生物学的両親に似てくるように(Plomin,Fulker,Corley&Defries,1997)、遺伝的影響が出現することを示唆している。

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