進化・遺伝・行動(4)

最近、人格の一部などある種のヒトの形質は、神経伝達物質の受容体に作用する特定の遺伝子によって影響を受けることが研究差たちによって提唱されている(Zuckerman,1995)。

この種の多くは、ある種の心理学的形質を持っている家族を見つけ、そうでない家族と比較する。分子遺伝学の技法を用いて、研究者は標的になっている形質と相関する遺伝子あるいは染色体を見つけようとしている。たとえば、「新奇性探索」(人格検査で衝動的、探求的、短期傾向があるとされるもの)の形質の組み合わせはD4ドーパミン受容体を制御する遺伝子に関係していると言われている(Benjamin et al.,1996)。

ときにこの種の分析は極めて特別な行動形質に用いられてきた。たとえば、アルコール依存症の父を持つ息子は、無作為に選ばれた人たちに比べアルコール依存症になりやすい。アルコールを飲んだとき、アルコール依存症の父を持つ息子はそうでない人たちに比べ、より多くのエンドルフィン(報酬に関係する自然麻薬神経伝達物質)が放出されやすく、アルコール依存症への生物学的素因の存在が示唆されている(Gianoulakis,Krishnan,&Thavundayil,1996)。

しかし、これらの分析は誤解を生むことがあり、注意を要する。たとえば、かつてD2ドーパミン受容体は重度のアルコール依存症でのみ生じ、それゆえアルコール依存症の遺伝的基礎であるといわれていた。しかし、この遺伝子の最近の研究では、ほかの楽しみを求めるヒトにも見られ、薬物依存症、肥満、ギャンブル依存症、そのほかの「非制限性行動」にも関係している可能性を示唆している(Blum,Cull,Braverman,&Comings,1996)。

この遺伝子の役割と行動との関係に関する解釈は、この発見により数年で変わり、また新しい事実が出てくるとさらに変わる可能性もある。このような研究は、どのような種類の行動でも、その遺伝的基礎が特定されたと結論づける前に十分な証拠を積み上げることが必要であることを強調している。

遺伝子の発現への環境の影響

個人がこの世に持って生まれる遺伝的可能性は出会う環境の影響をかなり受ける。糖尿病を発症する傾向は遺伝するが、実際どのようにしてそうなるのかはわかっていない。糖尿病は膵臓が炭水化物を燃焼するのに十分なインシュリンを製造できず、エネルギーを供給しない疾患である。

しかし、糖尿病遺伝的可能性を持っている人が必ずしも糖尿病になるわけではない。たとえば一卵性双生児の片方が糖尿病を発病しても、もう一方はその半分程度の率でしか発病しない。糖尿病を引き起こす環境要因がすべてわかっているわけではないが、かなり確立しているものの一つは肥満である。

太っている人は痩せている人に比べて炭水化物を代謝するためのインシュリンが多く必要である。そのため糖尿病の遺伝子を持っている人が太っている場合発病する可能性が高い。

同様のことが統合失調症でもある。もし、一卵性双生児の片方は統合失調症であると、もう一方も何かしらの精神疾患の兆候を示す確率は高い。しかし、それが明確な統合失調症を発症するかどうかは多くの環境要因に依存する。したがって、遺伝子は統合失調症の要因をもたらすが、育つ環境がその結果を招くわけである。

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