条件づけの生物学的制約

初期の行動主義では、学習法則はどの種も同じと見なし古典的条件づけによってどんな条件刺激(CS)でも、どんな無条件刺激(US)と連合させることが出来ると考えていた。

しかし、動物行動学者らの「人間や動物の行動に現れる強力な生物学的要因」の発見により、古典的条件づけにおいて刺激による連合することが出来るかどうかは、生物学的および進化論的な制約を受けることが明らかとなった。

例えば、特定の食べ物を食べた後気分が悪くなると二度と同じ食べ物を食べたいと思わないなどの経験があるだろうが、このような味覚嫌悪学習は古典的条件づけの典型的な例であると考えられていた。

しかし、この条件づけは以下の理由から条件づけの規則に沿っていないと考えられた。

1、多くの味覚嫌悪学習は、一度のみの食事の後に経験され、繰り替えに提示される必要性がない。

2、条件刺激と無条件刺激の間隔が摂食後すぐとは限らず、数時間後といったように非常に長い。

さらに、ガルシアとケーリング(Garcia&koelling,1966)らは、ラット実験によって学習においての生物学的要因の重要さを明らかにした。

実験では、まずラットに味付き溶液の入ったチューブを舐めさせ、その後チューブを舐めるたびにクリック音と光が提示され、溶液の味と共にその音と光の3つの刺激を同時に学習させた。

そして、次の段階で溶液に毒性のある塩化リチウムを少量混ぜ、次の段階と最終段階では、チューブの中身は同じく味付きであるが、光とクリック音をなくし、その後逆にチューブの中の溶液を無味にして光とクリック音が提示された。

この実験で判断できるのは、ラットは甘い味と光+クリック音のどちの刺激が具合を悪くするのと連合させるかということである。

その結果、ラットは味があるときの溶液を避けるようになり、光+クリック音のときは避けなかった。つまり、ラットは味と具合が悪くなることだけを連合させたのである。

だたし、この結果は決して光+クリック音よりも味がより強力な条件刺激になる考えられるわけではない。

次の段階で、ラットには少量の毒性溶液の代わりに電撃が与えられた。この結果ラットは最後の段階には光+クリック音が提示されるときは溶液を避け、光+クリック音がなく味付き溶液だけのときは溶液を避けなかった。

これらの結果から、味は嘔吐に対して電撃よりもはるかに適した信号であり、光+クリック音は電撃に対して嘔吐感よりもはるかに適した信号であることが分かった。

これらの味とクリック音+光は両方とも有効な条件刺激であり、嘔吐感を促すことと電撃を受けることの両方とも有効な無条件刺激であるのだから、どちらかの条件刺激もどちらかの無条件刺激に連合できるはずである。

なぜ実験のように連合の選択性が存在するのかは、先述の生物学的および進化論的な制約を受けるというもので、生体が学習するうえで何を必要としているかは進化の過程によって違いがあり、動物は特定の事を特定の方法で学習するため「事前にプログラム化」されているという動物生態学の主眼点と一致する。

通常ラットは自然の中で食物を選ぶのに味覚に頼る。したがって味と吐き気の間の連合は促進されるが、音や光と吐き気は促進されにくい。

また自然環境では寒さや外傷の様な外的要因に由来する痛みの多くは外的刺激によっている。この結果として、音や光と電撃の間の連合は促進されるが、味と電撃の間では連合の促進がされにくいとも考えられる。

さらには、生物の種が異なれば同じような吐き気を引き起こすことを異なるやり方で学習する。

例えば通常鳥は、味よりも見た目によって食物を選択するとされ、それゆえ音や光を吐き気に連合されるように学習するが、味を吐き気に連合されることはないとの主張もある(Wilcoxin,Dragoin&Kral,1971)。

極端な例かもしれないが、これらの実験結果から「生物学的および進化論的な制約を受ける」という考えは成立している。

このような生物学的制約は、古典的条件づけに限らず道具的条件づけ(オペラント条件づけ)においても、条件刺激と無条件刺激の組み合わせ方によっては条件づけが生じない場合がある。

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