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【記憶】短期記憶 (short-term memory)と作業記憶 (working memory)

感覚のうちで、注意を向けられた情報だけが感覚記憶から次の記憶貯蔵へと移される。この記憶貯蔵を短期記憶(short-term memory:STM)と呼ばれ、この記憶は保持の時間が秒単位程度の短い記憶である。

一方、それよりも長い、何分、何時間、何日、何年にわたる記憶は長期記憶(long-term memory:LTM)といわれる。実験によれば短期記憶系は感覚貯蔵庫や長期記憶の双方とも分離して存在することが証明されている(BROWN,1958;Peterson&Peterson,1959)。

短期記憶の記憶範囲

短期記憶の容量はどの程度なのか、また増すことはないのか。例えばランダムに並べられた仮名文字からなる無意味系列については、その記憶範囲は、やはり7個程度になる。一方、日常的な物事の名前の系列を記憶する場合にも、7個程度は再生できる。

この名前の仮名文字の個数に換算してみると、前の無意味な文字列の何倍もの量を記憶したことになる。物事の名前のように、1つのまとまりをなしているものは、1個の単位として扱うことができるのである。このようなまとまりをチャンクと呼ばれ、多くの情報を効率よくチャンク化して扱えるのであれば、短期記憶で扱える情報の範囲を増すことができる。

実験によれば、被験者は、ランダムな数字の列についてチャンク化する訓練を行った結果、数字の記憶範囲を約80個にまで増やすことができた。成人は、長期記憶に多くの知識を保持しており、これが短期記憶のチャンク化の基礎として働いている。

作業記憶 (working memory)

外界から短期記憶に入ってきた情報は、リハーサル(復唱)によって維持されているが、そのあいだに、あるものは長期記憶に取り込まれる。その他のものは、そのうちに、置き換えと減衰によって短期記憶から失わてしまう。
記憶システムの関連性
一方、多くの心的活動では、処理の途中の情報や長期記憶から取り出した情報を一時的に蓄えておく必要がある。例えば計算の途中の数値、複雑な文章を読んでいるときの関連した情報など、このような記憶の機能は、短期記憶に似た性質を持つものとされるが、特に作業記憶(working memory)と呼ばれ、思考の働きは、これに大きく依存している。

短期記憶と長期記憶との関係については、いくつかの考え方があるが、両者は別の記憶であり、入ってきた情報は、まず短期記憶に一時的に蓄えられ、その後長期記憶に組み込まれるとする考えが、現在有力である。また一方、両者は別のものではなく、むしろ入ってきた情報が処理される仕方たと程度の違いとする考えもある。

いずれにしても短期記憶と長期記憶とは、密接に関連しながら働いている。

系列位置効果

無関係な単語30個を選び、1秒に1つずつ順に一回だけ被験者に聞かせ、直後に思い出すことのできる単語を、提示した順と関係なくできるだけたくさん書くといった「自由再生」行う、などのテストを多数回行ってリスト内の各位置についての正解率を示すと、図Aのように、最終位置の数個の単語の再生成績がよく、次いで最初の位置の数個の成績がよく、中央の項目の成績が最も悪くなる。

項目数を20個にしても40個にしても結果は同様である。このような現象を系列位置効果と呼び、また最終項目の成績上昇を親近効果、最初の項目の成績を初頭効果と呼ばれる。
-系列位置効果1
この系列位置効果は、記憶過程が短期記憶と長期記憶の2つのシステムから成るとする二重記憶モデルないしは2過程説を支持する証拠とされている。

二重記憶モデルによると、再生は図Aのように、短期記憶による再生と長期記憶による再生の2つの部分に分かれるという。すなわち、最後の数項目はまだ短期記憶に存在しており、容易に検索が可能なため再生率が高くなり、親近効果生じる。

一方、系列の最初の数項目は短期記憶に余裕があり、リハーサルもしばしば行われるため、長期記憶に転送されやすく再生率も比較的よく初頭効果が生じる。引き続き多くの項目を提示すると、すでに短期記憶には余裕がないため、リハーサルや長期記憶への転送の機会も低下して再生率も低くなるという。

また、図Bの単語提示を1語当たり2秒ずつに伸ばしてリハーサルを行う時間的余裕を生じさせると、短期記憶の部分の再生率が上昇すること、逆にリスト提示後すぐに逆算をさせるなどの短期記憶からの再生を妨げると、最終部分の成績の上昇が消失すること、これらによってこの仮説は支持されている。

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