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【生物学的基礎】進化・遺伝・行動(1)

心理学の生物的基礎を十分に理解するためには、進化と遺伝的影響についても若干知る必要がある。何百万年以上もすべての生命が進化を続けており、環境要因が神経系の組織化と機能に重要な役割を果たしてきている。

チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)が進化を説明した過程が、行動と脳の形成に欠くことのできない役割を果たしている。ダーウィンの自然淘汰(natural selection)の法則は、生命体が生き残るために最も貢献する遺伝的特質が次の世代に引き継がれると述べている。

行動遺伝学(behavior genetics)の領域では、行動特徴の遺伝を研究するために遺伝学と心理学の方法論が結合されている。(Plomin,Owen,&McGuffin,1994)身体的特徴の多く、例えば身長、骨格、髪や目の色などは遺伝することが知られている。

行動遺伝学の興味は知的能力、気質、情動の安定度などの心理的特徴が、どのくらい親から子孫へ伝えられるのかにあった(Bouchard,1984.1995)。近年の研究は、知能は遺伝的要素があることを示唆している。

ロンドン大学精神医学研究所のロバート・プロミン(Robert Plomin)が率いる研究者らは、知能に関係する特定の遺伝子を同定している(Fisher et al.1999)。しかしながら、このような発見にはまだ議論の余地があり、人が生長するにつれ、環境条件が、特定の遺伝的要因が個人にどのように表現されるかに大きくかかわるのである。

行動の進化

いかなる場合も、行動の検討には、膝蓋腱反射を起こす脊髄運動ニューロンの発火にみられるような、直接の原因(proximate cause)とともに究極の原因(ultimate cause)をも含む必要がある。行動の究極の原因は、進化という観点で説明される。

それに対して、直接の原因はどのように行動が起こるのかを説明するが、究極の原因はそもそもなぜその行動が存在するのか、すなわち、なぜそれが自然淘汰(natural selection)によって進化したのかを理解するのに役立つ。

たとえば、オスの攻撃性を考えてみる。ヒトにおいても動物においても、オスはメスより攻撃的であるのが一般的であり、(Buss&Shackelford,1997)、とくに同性の社会的交流においてそうである。生殖行動が季節的に規定されている哺乳動物では、オス間の攻撃性は特に繁殖期に高まる。

攻撃行動の直接の原因は比較的よく理解されている。たとえば、性腺ステロイドやテストステロンの循環値が攻撃行動と相関しており、皮質下の構造が損傷されると動物の攻撃行動が減少したり増強したりする。最近の研究では、セロトニンが攻撃行動において重要であるとされており(Nelson&Chiavegatto.2001)、嗅覚的手がかりが少なくとも、ネズミではオスの攻撃性を仲介しているようである(Stowers,Holy,Meister,Dulac&Koenteges,2002)。

さらに、社会的状況が強力に攻撃行動の性質と様相を変えている。繁殖期にオスアカシアとゾウアザラシは近づくオスを威嚇し攻撃するが、性を受け入れるメスを攻撃したりしない。

しかし、攻撃行動とこれを支える神経およびホルモン系は一体なぜ存在するのであろうか。攻撃行動の究極の原因は何であろうか。進化や機能的観点からすると、繁殖期の攻撃行動は適応(adaptive)である。

アカシアでは攻撃的なオスが受容するメスとつがう傾向にあり、それは生殖の成功をもたらし、生殖の成功は攻撃行動を支配する遺伝子の存続を促進する。したがって、次世代では攻撃性の遺伝子を持つオスの割合が増すことになる。非攻撃的オスはつがいの相手を確保することが少なく、その遺伝子を群れにおいてうまく表出できない。

これはオスの攻撃性が論理的あるいは道徳の観点から見て「良い」と言っているわけではなく、むしろ、この行動が進化の観点からすると適応的であるということである。

攻撃行動はつがう機会への競争により引き起こされているので、性的な淘汰といわれている。性淘汰(sexual selection)は自然淘汰の特別な場合であるが、より高い生殖効率という性において成功を助長する特質をもたらす。

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