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【記憶】記憶過程の三段階

人間が学習できるということは、過去の経験の効果を保持できるということであり、このように保持にかかわる過程を記憶という。すなわち、経験によって行動が変化する過程を、新しい行動の獲得という変化で見るとき学習と呼び、その変化の保持という面で見るとき記憶と呼ぶ。

これは人間だけに限らす非常に原始的な生物においても学習が可能であることから、記憶は生体の基本的な機能であると言える。

記憶の過程について、符号化(encoding stage:または「記銘」)貯蔵(storage stage:または「保持」)検索(retrieval stageまたは「想起」)の三つの段階に分解できる。

第一段階は、経験したことなどが記憶として取り込まれること、外部の刺激がもつ情報を人間の内部の記憶に取り込める形に変換する。

例えば人を紹介されたときなど、口頭で発声されたその人の名前に対応する物理的入力(音波)を、記憶が受容できるような種類の符号もしくは表象に変換し、その上でその表象を記憶の中に「位置づけ」する。

同様にその人の顔(特徴など)に対応する光の様相である物理的入力をその顔(特徴など)の記憶に変換し、その二つの表象を結合させる。これが符号化段階(encoding stage:または「記銘」)である。

第二に符号化され取り込まれたそれらの情報は内部で保持、もしくは貯蔵されており、外には表れない。これが貯蔵段階(storage stage:または「保持」)である。

第三は、保持、もしくは貯蔵されていたそれらの情報(記憶)が、ある時期の後に外に現れる。記憶に保たれたものの中から特定の情報を探し出す。例えば貯蔵されている紹介された人の顔(特徴)の表象に基づいて、またであった時などその人を再認し、そして、その再認に基づいて貯蔵庫からその人の名前を再生る。

符号化貯蔵検索

この記憶されている情報から想起することが検索段階(retrieval stageまたは「想起」)である。また、この検索(retrieval stageまたは「想起」)には、再生、再認、再構成がある。

以前の経験を言葉、絵、動作などで再現することが再生であり、以前に経験したことと同じことを経験した場合にそれと確認できることが再認で、また以前に経験したことを、その要素を組み合わせて再現知るのが再構成である。

記憶の失敗

記憶は上記の三つのどの段階においても失敗することがあり得る。

もし、紹介された人と二度目に会ったときその人の名前を再生することが出来なかったとすれば、このことは符号化の失敗(そもそもその人の顔を適切に貯蔵しなかった)、貯蔵の失敗(どこかへ忘却した)、検索の失敗(一方から他方を呼び出すことが出来るように、名前と顔を結合していなかった)のいずれかを反映していることになる。

例えば符号化されるときに、見ていなかったり十分注意していなかったりして、そもそも記憶されなかったかもしれない、また、いったん記憶されたことが保持の時期に消えてしまい思い出せない状態になったかもしれない。

あるいは、記憶は保持されているのだが、一時的に想起できなくなっているのかもしれない。この記憶されていたことが、想起できなくなるのが忘却である。

しかし、想起できるかどうかには、様々な条件が影響している。自発的に再生できなくても、手がかりがあれば再生できることがある。再生できなくても再認できることが多い。

再生も再認もできないときでも、再学習させると、前よりも容易に学習できるという事実がある。この事からも何らかの記憶の効果が残存していることが推測される。

記憶の種類

記憶の種類としては、色々な分類のしかたがある。情報は感覚器官を通し入ってくるので、それぞれの感覚様相に応じて、視覚、聴覚、味覚、触覚などの記憶に分けられる。また、人間の記憶では、言語に表せるような意味内容に関することが大きな部分を占めており、重要である。

一方運動動作に関する記憶などもある。

また、個々の出来事の記憶と、一般的な知識、技能についての記憶とには違いがあることが指摘されている。普通、最も典型的な記憶らしい記憶と考えられるのは、いつどこで何があったかがはっきりしているような一回限りの具体的な記憶で、このような記憶をエピソード記憶と言われる。

これに対して、物事、事象についての一般的知識や言語の意味などは、いつどこで何があったかわからないが、様々な経験を積み重ねることによって記憶されていく、これを意味記憶と呼ばれ、また、ある物事、事象がどのようなものであるかを知るのを宣言的知識(記憶)と言い、こてに対して、あることのやり方を知るのを手続き的知識(記憶)という。

これら両者についても記憶の働きに違いがみられる。記憶にはまた、保持の経過の点から、短期記憶長期記憶とに分けられる(詳しくは三つの記憶貯蔵庫)。

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