この手掛かりの価値を述べる前に、意味することに二つ言及する。第一に、混色のためのこの配合には重要な実用的効果がある。一つの良い例は、TVや写真撮影における色の再現が広範囲の色をたった三つの原色の混合によって生み出すことができるという事実である。
例えばTV画面は三色の(青、緑、赤)の小さな点から成り立っている。加法混色は、点が互いに接近しているので網膜上に像が重なり合うために起こる(図1)。
混色を表現する簡単な方法は、色彩円を用いることである。スペクトル色(私たちの感度の領域内の波長に対する色)は、色彩円の円周の点によって表現される。スペクトルの両端は繋がっていない。両端の空白部は、非スペクトルの赤と紫に対応する。
非スペクトルの赤と紫は、長い波長と短い波長の混合によって生み出すことができる。色彩円の内部は光の混合を表現している。色彩円の中心部に近い光は飽和度より低い(あるいはより白い)。白はど真ん中にある。どんな二つの光の混合も二点をつなぐ直線に沿って位置する。
この線が色彩円の中心部を通り抜けるとき光は適切な比率で混合されると白く見える。このような対の色は捕食と呼ばれる。
では、次に二つ目の意味することというのは、色覚欠如についての私たちの理解に関係がある。ほとんどの人たちは、広範囲の色に合うものを三原色の混合で使うことによって見つけることができる。
二色覚(dichromats)と呼ばれる人たちは、色覚健常者(三色覚)が区別できるいくつかの色を混同するので、色覚に欠如がある。しかし、二色覚は、まだ色を見ることができる。一色覚についてはそうではない。
その人たちは異なる波長を全く弁別できない。一色覚が本当の色盲である(色盲の検査は図2に示されているような図版で行われるこれは混合実験を行うより簡単である)。ほとんどの色覚欠如は遺伝が原因である。
色盲は女性(0.03%)よりも男性(2%)においてずっと頻繁に起こる。なぜなら、状態の決め手となる遺伝子が、Ⅹ染色体上に位置する劣性遺伝子であるからである(Nathans,1987)。
色盲の検査に使われる図版で、左は、ある種の赤緑色盲の人たちに数字の5だけが見える。ほかの人たちには7だけ見える。さらにほかの人たちにはいかなる数字も見えない。同様に、右では、色覚健常者には数字の15か見えるが、赤緑盲目の人たちにはいかなる数字も見えない。
色覚の諸理論
色覚に関する主要な理論は二つ提案されている。一つは、1807年、科学者が錐体の存在について知るずっと前に、トーマス・ヤング(Thomas Young)によって提案された。50年後、ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(Hermann von Helmholtz)がヤングの理論を発展させた。
ヤング-ヘルムホルツ説あるいは三色説によれば、私たちがたくさんの異なる色をべっべつできるとしても、色受容器には三つの種類しか存在しない。私たちは現在、これらが錐体であることを知っている。それぞれの種類の錐体は、広範囲の波長を認識できるが、比較的狭い範囲内で非常によく反応する。
図3に示されたように、S錐体は短い波長(青)を一番よく認識でき、M錐体は中間の波長(緑と黄)を一番よく認識でき、L錐体は長い波長(赤)を一番よく認識できる。これら三つの受容器の共同活動が色の感覚を決定する。
すなわち、一定の波長の光が、三つの受容器をそれぞれ違った程度ずつ刺激し、三つの受容器における活動の特定の比率が特定の色の感覚を生ずる。したがって、質の符号化に関する議論に関しては、色の質は、たくさんの色のそれぞれのための特殊な需要期によってではなく、三つの受容器の活動様式によって符号化されると三色説は主張する。
三色説は前に言及した色覚についての事実を説明する。しかし何よりも等色実験の結果を説明する。第一に私たちは異なる波長を弁別できる。なぜなら異なる波長は三つの受容器にいおいて異なる反応を生じるからである。
第二に、三色法則は、三色説から直接に導かれる。私たちはどんな色に対しても、間隔の広い三つの波長の混合を見つけることができる。なぜなら、間隔の広い三つの波長は、三つの異なる受容器を活性化させ、これらの受容器の活動が検査色の知覚を結果として生ずるからである。
第三に、三色説はいろいろな種類の色覚欠如を、三種類の受容器の一つまたはそれ以上が欠けていると仮定することによって説明する。すなわち、二色型色覚者は必つの種類の受容器を欠けていて、一色型色覚者は三種類の受容器のうち二つを欠けている。
長い間、知られているこれらの事実を説明することができるが、色知覚についてのいくつかの確立した発見を説明することができない。
1878年エーヴァルト・へリング(Ewald Hering)は、全ての色が、赤、緑、黄、青の感覚の一つないしは二つから成り立っているものと記述できることに気づいた。へリングはまた、どんな色も、赤みがかった緑、あるいは、黄色がかった青としては知覚されないことに注目した。
むしろ、赤と緑の混合は、黄色に見え、黄色と青の混合は白に見える。これらの観察は、黄色と青がそうであるように、赤と緑が反対-対(つい)をなすこと、そして反対-対の色は同時には知覚できないことを示唆した。反対-対という概念に対するさらなる支持は、参加者がはじめに色のついた光を凝視して次に無色の面を見る研究から得られる(下図の補色的残像)。
実験としては、まず、色の中心部にある小さな丸い点を一分間しっかりとみる。次に、無色で灰色地の中の小さな丸い点へ凝視点を移す。すると元のとは補色になった色のついた、ぼんやりとした像が見える。青、赤、緑、黄色は、黄色、緑、赤、青に置き換えられる。
これらの現象の観察によってへリングは、反対色説と呼ばれる、色覚の別の理論を提案するに至った。へリングは、視覚系が二つの種類の色認識単位を含むと信じた。一つは赤または緑に反応し、もう一つは青または黄色に反応する。
単位はそれぞれ、二つの反対色にたいして正反対の仕方で反応する。たとえば、赤-緑単位は、赤が提示されたときに反応率を増加させ、緑が提示されたときに反応率を減少させる。一つの単位は、同時に二通りの仕方では反応できないので、二つの反対色が提示されれば白が知覚される(図3)。
この図は処理過程の後どの段階で反対過程神経反応を生み出すために結合した三種類の受容器を示している。錐体の数字は、感度が最大となる波長を示す。矢印のついた線は、活動を増加させる結合を表す。小さな丸い点のついた線は、活動を減少させる結合を表す。これは機構全体の小さな部分に過ぎないことに注目してほしい。もう一組の反対過程単位は、活動を増加させる結合と減少させる結合に関して、反対の配列を有する。
私たちは、反対単位の一つの方だけがつり合いが取れていないときにはいつでも、赤か緑または黄色か青たった一つの色相を知覚し、両方の種類の単位が釣り合っていないときには、色相の組み合わせを知覚する。何物も赤-緑あるいは黄-青として知覚されない。なぜなら、一つの単位が同時に二通りの仕方で反応することができないからである。
さらに補色的残像の現象は、たとえば、はじめに赤を見ると、反対単位の赤の成分が疲労し、その結果、緑成分が働き始めるからである。
これら色覚に関して三色説と反対色説の二つの理論があり、それぞれの理論には説明できる事実もあれば説明できない事実もある。何十年もの間、二つの理論は互いに競合するものとみられてきたが、ついに研究者たちは、三色説のよって同定された三種類の受容器が、視覚系のより高い水準にある色-反対単位への入力を送るというに段階説へと二つの理論が統合されると提案した(Hurvich&Jameson,1974)。
この二段階説は、(三色説の三種類の受容器を含む)網膜の後に、色-反対単位として機能し視覚情報に対して作用するニューロンが視覚系にあるはずだと示唆する。そして、時日、そのような色-反対ニューロンが、網膜と視覚皮質の間の神経的中継地点である視床で発見された(DeValois&Jacods,1984)。
これらの細胞は、自発的に活性状態になり、ある範囲の波長に反応して活動率を増加させたり、別の範囲の波長に反応して活動率を減少させたりする。たとえば、視覚系のより高い水準にある細胞には、網膜が青い光によって刺激されるとより速く発火し、網膜が黄色い光にさらされると遅く発火するものがある。
このような細胞が、青-黄反対-対の生物学的基盤を構成しているように思われる。三色説と反対過程説が関係し得る仕方をし示す神経配線の概念図が図4に与えられる。
この図は、処理過程の後の段階で反対過程神経反応を生み出すために結合した三種類の受容器を示している。錐体の数字は、感度が最大となる波長を示す。矢印のついた線は、活動を増加させる結合を表す。小さな丸い点のついた線は、活動を減少させる結合を表す。これは機構全体の小さな部分に過ぎないことに注目してほしい。もう一組の反対過程単位は、活動を増加させる結合と減少させる結合に関して、逆の配列を有する。
色覚に関するこの研究は、一つの問題に関する新歯学的アプローチと生物学的アプローチとの交流の印象的な成功例である。三色説は三種類の色受容器があるに違いないと示唆し、それに続く生物学的研究が網膜に三種類の錐体が存在することを立証した。
反対色説は視覚系にはほかの種類の単位があるに違いないと言い、その後、生物学的研究者が視床に反対色細胞を発見した。さらに、二つの理論がうまく統合されたことで、三色細胞が反対色細胞へ入力を送るということが必要になったが、これもまた、後の生物学的研究によって立証された。
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