眼に空気を吹きつけるなどの刺激(無条件刺激(uncon-ditioned stimulus:US))を与えた場合、その刺激が反射的な瞬目を誘発する。この無条件瞬目反応は、空気を吹きつける前に音などの様な条件刺激(conditioned stimulus:CS)を与え訓練すれば空気の刺激がなくともその音が瞬目条件反応(conditioned response:CR)を誘発する。
リチャード・トンプソン(Richard Thompson)らは、ウサギのを用いて詳細なマッピング研究を行い、この形態の古典的条件づけにおける神経回路図を明らかにしている(Thompson&Krupa,1994)。
シナプス可塑性(学習と記憶に関するシナプスの形態およびまたは生理の変化)に不可欠な部位は小脳に存在すると思われる。通常小脳に損傷を被っている動物は、条件瞬目を学習することも記憶に留めることも出来ない(ただし、正常な瞬目を示す)。
瞬目条件づけには小脳でのシナプス伝達の変化が関係し、この変化は長期抑圧 (LTD)と呼ばれ、小脳皮質のシナプスで長時間にわたるシナプス伝達の低下と結びついている。
この変化は、小脳皮質ニューロンのCSの伝達する経路で生じ、通常、瞬目条件づけ回路のCRの産出部分を抑制するため、その小脳皮質でのCS伝達の低下が行動CRをもたらす。
また、恐怖条件づけにおいても瞬目条件づけの理論的枠組みと同じように、恐怖経験を学習し記憶に留めためには、脳内の深部にある大脳辺縁系構造で、恐怖をはじめ様々な情動に重要な役割を果たす扁桃体が不可欠な部位となる(Kluver&Bucy,1937)。
扁桃体は、脳の視床と皮質領域から感覚情報を受け取り、それらの刺激を連合し、それらの連合を視床下部、中脳、延髄によって仲介され恐怖反応へと変換する。扁桃体を損傷すると動物は、恐怖記憶を学習することも記憶に留めておくことも出来ない(Davis,1997;Fendt&Fanselow,1999;Maren,2001;Maren&Fanselow,1996)。
さらに、扁桃体のニューロンは、新たな恐怖の学習中に多数の変化を示す。例えば扁桃体ニューロンは嫌悪USに連合されているCSに反応して自ら活性を増大させる。
このような扁桃体での学習は、扁桃体へCS情報を送る経路でのシナプス伝達の持続的な増大である長期増強 (LTP)によって仲介されることは確かであるとされる(Rogan&LeDoux1996)。したがって、瞬目条件づけでも恐怖条件づけでも、特定の脳領域でのシナプス伝達の変化が連合学習に伴う行動の変化の原因である。
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