1930年代にアメリカの心理学者であるエドワード・トールマン(Edward C.Tolman)は、単純な動物にも潜在学習(latent learning)が認められると言う知見を述べている。
潜在学習とは、報酬なしの時期に潜在的に進行していた学習が、報酬によって顕在化するという学習形態である。
トールマンら(Tolman&Honzik,1930)の典型的な研究では、14個の分岐点をもつ複雑な迷路を用いて3郡のラットの行動を比較した。この迷路はスタートからゴールまでの間のそれぞれの分岐点にドアがあり、後戻りができない仕組みで、いずれも1日1試行ずつ行われた。
1郡のラットには、迷路通り抜けゴールまでたどり着くことが出来たら報酬として餌が与えられ、2郡のラットにはゴールに行ってもエサが無い条件で、3郡ラットには10日目まではゴールに行ってもエサが無いが、11日目からは餌を与える手続きに切り替えられた。
1郡では多くの日数を要しながら次第に迷路を誤らず解決するようになったが、2、3郡のラットは10日目までは迷路の誤りの減少はあまり見られず、解決はほとんど示されなかった。
しかし、3軍のラットは報酬の餌を導入されると急速に誤りが減少し、1回目から毎回餌を与えられた1郡のラットの遂行に追いつき同じとなった。
この結果は、ラットが報酬がない時期にも迷路について学習し「潜在知識」を持ち、その知識は報酬の餌が導入されるやいなや行動として表出したことを示していた。
トールマンはこれらの実験から、学習を「刺激反応間の連合の形成」、つまり右や左に曲がると言うような一連の反応を学習しているのではなく「環境の認知のしかたの変化」ととらえ、認知地図(cognitive map)すなわち迷路の配置図の心的表象(迷路の道筋の内的な地図)を作り上げていたと結論付けた(1932)。
さらに重要なことに、この学習は動物が強化されないときでさえ生じるのである。
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