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【知覚】再認の過程

知覚機構は、関連のある対象物が場面の中のどこにあるのかということだけでなく、それがなんであるのかも決定する必要がある。これが再認の過程。理想的には、一匹のネコが小道を横切ったとき、私たちはスカンクやフラフープではなく、ネコとしてそれを再認できる。

同様に、あたりさわりないテントが私たちの前にあるとき、それを危険なクマとしてではなく、あたりさわりないテントとして再認できる(しかし、進化論的枠組みから、クマをテントというよりも、テントをクマと誤って知覚してしまう方がよい状態であることは、注目すべきことである。私たちの知覚機構はおそらく、そのような方法で対象物を危険なものと知覚する傾向を持つように徐々に進化したのだろう)。

対象物を再認することは、同様にいくつかの下位問題を伴っている。第一に、私たちは環境から情報の基本あるいは原始的特徴(primitive features)を獲得し、ししてそれらを適切に組み立てなければならない。たとえば、私たちは赤いもの、緑色のもの、丸いもの、四角いものがある、という情報を獲得すると、それは赤い円、緑の四角であり、その逆ではない、ということを何とかして理解しなければならない。

第二に、私たちは、私たちが実際に見ている対象物が何であるかを理解しなければならない。私たちがちょうど述べた単純な例では、それが四角であることを、私たちはまず第一に理解しなければならない。もっと複雑な課題は、私たちが見ている線、角、形の組み合わせが人間の顔を構成している、ということを理解することである。そしてさらに複雑な課題は、そのかをがエリザベス女王のような特定の人物に属している、ということを理解することである。

続いて、私たちは再認に関するさまざまな機能について議論することになる。全体処理から部分処理への話から始める。それによって、ある一つの場面はその場面内の個々の対象物の近くを助ける。それから私たちは結合の問題(binding problem)ヘ進む。すなわち、色や形のようなさまざまな原始的要素に対応する、脳のさまざまな部分における活動は、対象物の一貫した知覚にどのように結びつけられるのか。次に、私たちは、対象物か何であるかを、実際にどのように再認しているのかを述べる。

全体処理から部分処理へ

図Aの左のパネルの対象物を見てみよう。それは何だろう。それは一個のパンかもしれないし、郵便ポストかもしれない。

視覚系はこの二つの可能性をどのように明らかにするのか。この問題と他の類似の問題に答えるために、知覚機構によって用いられる最も強力だ道具の一つは、文脈(場面)を使うことである。その対象物が何であるかを推論できるように、対象物は文脈の中に埋め込まれている。

すなわち、知覚機構はまず全体処理を行い、続いて部分処理を行う。全体処理ではその場面が何であるかを認識し、部分処理ではその場面についての認識を手がかりに個々の対象物を識別する。したがって、知覚機構がその場面を道であると決定したならば、その対象物はその対象物は郵便ポストであると解釈されるであろう。一方、知覚機構がその場面を台所であると決定したならば、その対象物は一個のパンとして解釈されるであろう。

この過程の理論はトム・サノッキ(TomSanocki,1993)によって言い表されている。彼は、世界における対象物が無限の方向、大きさ、形、色、などで現すことができることに注目し、次のように指摘している。「もし対象物を識別中に、知覚機構が無限の選択肢に関してそのような要素を検討すれば、刺激特徴とその特徴を有している対象物との莫大な数の組み合わせが、結合の爆発的増加を引き起こすだろう」。

サノッキは、ほかの方法で不可能な情報処理課題を減少させる明かな手段は、早期に(全体の)情報を使って、後の情報の解釈を抑制することである、という点に注目している。

線に関する多くの研究は、確かに、この種の過程が生じることを見いだしている。たとえば、シンスとオリバ(Schyns&Olivs,1994)は自然を模した合成写真を示した。合成写真は、たとえば地平線と道のような二つの関係ない写真の二重露光である。

合成写真を構成する場面の一つ(例えば、地平線)は全体情報のみを含み、一方、ほかのもの(道)は部分情報のみを含んでいた。それから、合成写真を短い時間(たとえは、約10ミリ秒)あるいは長い時間(たとえは、約100ミリ秒)、参加者に見せ、参加者はそれらが何に見えたかを尋ねられた。

短時間の提示では、参加者は全体情報(この例では地平線)のみを含む場面が見えた、と報告した。一方、長時間の提示では、参加者は部分情報(道)のみを含む場面が見えたと報告した。これは、視覚系がまず全体情報を獲得し、次に部分情報を獲得する傾向があることの証拠となる。

結合の問題:前注意過程と注意過程

注意に関する先の議論において、注意は、膨大な入力情報の中どれが処理され、そして結局は意識的に知覚されるのかを選択する過程であることを学んだ。注意はまた、入力された刺激のさまざまな特徴を結びつける役割を持っていると考えられている。

それは、錯覚的結合(illusory conjunction)として知られるものである。参加者は図Bに示したような、小さな赤い円、大きい緑の四角、中ぐらいの青の三角形のを非常に短時間(1秒の20分の1程度)提示され、そして何が見えたかを報告するように求められたと仮定しよう。

参加者は一般的には三つの形と三つの色について報告することができる。しかし、しばしばどの色がどの形になっていたかを誤って報告することがある。たとえば、参加者は、視覚系は緑ではなく赤であったと報告する。このように、形(視覚系)と色(赤)の結合は知覚されているが、それは誤っている(人々は本を読んでいるときに、この現象におおよそ日ていることをしばしば経験する。彼らは教科書のある行のある単語の部分、たとえば「deliver」の「liver」を、異なった行の別の単語の部分「cesspool」の「pool」と結びつけ、そして教科書の中で「Liverpool」という単語を見たと知覚するかもしれない。それによって、形と位置という原始的特徴を誤って結びつけていることになる)。

特徴統合理論

錯覚的結合は、視覚世界からの情報が別々の次元に沿って注意前に符号化され(たとえば、形と色は別々に符号化される)、そしてそれから続いて起こる注意処理段階で結合される、ということを示唆している。この考えは、実は特徴統合理論(feature-integration theory)の中心をなし、アン・トリーズマンによって最初に提案された(Anne Treisman,1986,1992)。

一般的な考えは最初の前注意段階で形や色のような原始的特徴が知覚され、一方、第二の注意段階では焦点的注意が、その特徴を統合された全体に適切に「くっつける」ために使われる。錯覚的結合が生じるのは、刺激呈示時間が原始的特徴を得るのに十分であるが、特徴をくっつける注意段階には不十分であるときである。

「統合された」特徴から原始的特徴を区別する標準的な実験的手続きは、視覚探索課題(visual search task)である。そこでの参加者の課題は、ある標的対象物が妨害表示の中にあるかどうかを決定することである。典型的な探索課題が図Cでに示されている。

その課題は緑の「L」を見つけることである。図の左のパネルでは、その課題は簡単である。すなわち、緑のLは、赤のTと赤のLの集まりから「飛び出てくる」。しかし右のパネルでは、同じ緑のLを発見するという課題は、その背景が赤のLと緑のTの集まりであるとき、かなり難しい。

その理由は、特徴統合理論によれば、色が原始的特徴であるからである。すなわち、左のパネルでは、1回で情報すべての走査できる。赤いものと緑のものは知覚的に分離していて、一つの緑の対象物、すなわち標的の緑のLは明らかである。

右のパネルでは、それに比べて、色の原始的属性に基づいて、背景から標的を区別できない。その代わりに、その文字が標的の文字であるか否かを決定する前に、色と形を一緒に結びつけて、それぞれの文字に注意を向けなければならない。

特徴統合理論の持つ問題

特徴統合理論はここ数十年にわたって多くの支持を得ている。しかし最近になって、それは理論的弱さと生物学的妥当性の面から批判されている。主要な問題は、視覚探索とそれに関連した手順を使って、科学者たちがあまりに多くの「原始的特徴」を仮定することによって、理論を現実的なものにしてきたということである。

その理論の持つ問題の特に明快な記述は、ディロロ、カワハラ、シビック、ヴィザー(Di Lollo,Kawahara,Suvic,& Visser,2001)によってなされている。彼らはその理論の代わりになる力学的制御理論(dynamic control theory)である。

その中心的な仮定は、「少数の視覚的原始的特徴に敏感な初期の硬く結ばれた機構の代わりに、さまざまな課題を行うために、構成要素がすばやく再構成される順応性のある機構がある。そしてその機構は、コンピューターにおいてつながりの内的様相がプログラム制御のもとで無数のゲートを動作可能にしたり停止したりすることによって、力動的に再配列されるのとほぼ同様である」ということである。

これは、本質的に、その知覚機構が、それぞれの課題を実行可能にする多くの下位機構を持っているのではなく、さまざまな課題に対してそれ自体で再配列を行うことを意味している。

対象物が何であるのかの決定

注意処理か前注意処理かは、どの視覚特徴が同じ対象物に属しているかを決定する問題に関係している。第二の問題は、対象物が実際に何であるかを決定するために、既決情報を使っているということである。ここでは、形が重大な役割を演じる。

たとえば、私たちは、それが大きいか小さいか(大きさにおける変化)、茶色か白か(色における変化)、滑らかか、凸凹しているか(きめにおける変化)、あるいはまっすぐ立っているか、わずかに傾いているか(方向における変化)にかかわらず、カップを再認できる。

それに比べて、カップを再認する能力は、形における変化に著しく影響される。カップの形が部分的に隠れていると、私たちはそれを全く再認できないかもしれない。形の重要性の一つの証拠として、私たちが対象物の形だけを保持している単純な線画からも、同様に対象物の多くの他の属性を保持している詳細なカラー写真からも多くの対象物を再認できることがあげられる(Biedrman&Ju,1988)。

ここでまた、視覚的処理は初期段階と後期段階に分けられる。初期段階では、線、縁、角度のような原始的要素によって対象物を記述するために、知覚的機構は網膜上の情報、とくに強さにおける変化を利用する。その機構は、対象物の特性を構成するために、これからの原始的要素を利用する。

後期段階では、その機構はこの特性を、視覚的記憶に貯蔵されている対象物のさまざまな分類の記述の比較し、最もよく適合するものを選択する。たとえば、ある特定の対象物を文字Bであると再認することは、その対象物の形が他の文字よりもBの形により適合するということである。

皮質における特徴検出器

対象物知覚の原始的特徴について知られていることの多くは、視覚野における単一細胞記録を使っている。他種(たとえば、ネコやサル)の生物学的研究からきている。このような研究では、種々の刺激が特定の皮質ニューロンと結びついた網膜の領域に提示されるときの、それらのニューロンの感度を調べる。そのような網膜の領域は受容野と呼ばれる。

これらの単一細胞研究はデイヴィット・ヒューベルととるステン・ウィーセル(David Hubel&Torsten Wiesek,1968)によって開拓された。かれらは1981年にそれらの研究によってノーベル賞を受賞した。ヒューベルトとウィーセルは視覚野における三つの型の細胞を確認した。それらの細胞は反応特徴によって区別される。

単純細胞(simple cell)は、眼球が受容野内の特定の方向や位置で、線状の刺激(たとえば、暗い領域と明るい領域の間の細い棒、あるいはまっすぐな縁)にさらされると反応する。図Dは、単純細胞垂直の棒や垂直から傾いた棒にどのように反応するかを説明している。


この図は光の防備対する単純な皮質細胞の反応を説明している。刺激が丈夫で、反応が下部にある。下部にあるそれぞれの垂直の棘波は一つの神経インパルスに対応する。刺激がないときも時々インパルスが記録される。刺激が提示されると、光の棒と位置と方向によって反応するかもしれないし、反応しないかもしれない。この細胞に関しては、水平の棒は反応に何の変化も生み出さないし、45度の棒は小さな変化を生み出し、垂直の棒は非常に大きな変化を生み出す。

最も大きい反応は垂直の棒で得られ、方向が最適方向から変化するにつれて反応は減少する。ほかの単純細胞はほかの方向と位置に同調する。複雑細胞(complex cell)もまた特定の方向の棒あるいは縁に反応するが、それは刺激が受容野内の特定の場所にあることを必要としない。

刺激が受容野を横切って動くと複雑細胞は連続的に反応する。超複雑細胞(hypercomplex cell)は刺激が特定の方向にあるだけではなく、特定の長さを持つことも必要とする。もし刺激が最適な長さを越えるならば、反応は減少し、そしてまったく止まるかもしれない。

ヒューベルとウィーセルの最初の報告以来、研究者たちは単一の棒や縁以外の形の特徴に反応する細胞を見出してきた。たとえば、特定の長さの角や角度に反応する超複雑細胞がある(DeValois&DeValois,1980;Shapley&Lennin,1985)。

前述した細胞のすべては、特徴検出器と呼ばれる。これらの検出器が反応する、縁、棒、角、角度は、多くの形に近づくのに使われるので、特徴検出器が反応する形の知覚の構築物と考えられる。しかし、後で見るように、この提案はテーブルやトラのような複雑な形よりも、文字のような単純な形に適合するように思われる。

特徴相互の関係

形の特徴はそれ自体の特徴だけではなく、特徴相互の関係も重要になる(図:E)。たとえば、直角と斜線という特徴は、三角形になるように一定の方法で結びつけられなければならない、ということは明らかである。同様にY交差と六角形は、立方体の線画になるように正確に連合されなければならない。ゲシュタルト心理学が「全体の部分の総和とは異なる」ことを強調してきたときに考慮していたのは、特徴相互のこのような関係であった。


【図の概要:線、角、形のような単純な二次元の特徴が組み合わされたとき、結果として生じる様相は構成要素の特徴間の空間的関係に大いに依存する。加えて新しい特徴が作り出される。これらの特徴は、たとえそれらが複雑な空間関係を伴っていても自覚実態を持つ】

全体が異なるという一つの状態は、単に構成部分を調べることによっては理解できない新しい知覚特徴を、全体が作り出すということである。図:Eは、四つのそのような創発特徴を示している。創発特徴は、より基本的な特徴相互の非常に特殊なく空間的関係から現れるが、それにもかかわらず、標的の検出や視覚的探索のような知覚課題において、まるでより単純な特徴のようにしばしば機能したりする(Enns&Resnink,1990;Enns&Prinzmetal,1984;He&Nakayama,1992)。

これらの結果は、視覚機構が形に関して多くの複雑な分析を行ってから、それらの分析結果が意識的に利用できるようになることを示している。

NPO法人日本統合医学協会

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